日本アーユルヴェーダ学会研究総会2008大阪

有限会社 アーユルスペース樂

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楽・資料室

2016/10/05 日本アーユルヴェーダ学会研究総会2008大阪

YOGAと不妊とアーユルヴェーダ
アーユルスペースRAKUのカルテからの一考察
発表者 山口 哲也 ・柳瀬 けい子

開院して8年、当初、来院者の多くはストレスによる不定愁訴、腰痛、肩こり、頭痛、婦人科疾患、或は心身症で通院中など、特に不妊治療目的で来られる方はいませんでした。
当院の治療方針はまずは身体を建て直し(他力・治療)、自力でコントロール(YOGA)できるようにする、と言うシンプルなものです。
鍼灸やアーユルヴェーダの治療からYOGAに移行した方の中から妊娠報告があっても特に気にしませんでした。身体も変わり、ストレス回避のノウハウを手にしたのだから当然妊娠くらいはする、と言うことで特に不妊に興味は湧きませんでした。
しかし、口では言わないものの、妊娠願望や秘かに人工授精をしている方々の少なくないのも判りました。
今回の試みは来院者のカルテから現代の女性の身体的問題、及び不妊症の原因の幾つかを突き止めよう、と言うものです。
RAKUの患者さんは9割が女性です。来院のきっかけは8割が友人や知人の紹介、後の2割は掲載誌やインターネットを通じて知った、と言うことです。概ね、高学歴、高収入、一人暮らしの方が多いのが特徴です。

アーユルスペースRAKUでは漢方処方の問診表を参考にしたものを使用しています。
主訴・既病歴・の他、身体を部位別に分けて◎をつけるのは20項目あります。

今回、生理の周期や日数等データ化を諦めたのは、『順調に◎』の内容に困惑したからです。
何回かの施術の後に『本当に生理は順調ですか?』と聞くと、『以前は不順だったが今はピルをのんでいるので順調です』とか、『順調に◎60日』と書く方とかいます。『60日周期で順調ですか?』と聞くと『私的には順調です』ときっぱり答えたりします。
『ここ3ヶ月は順調』と言うのはマシなほうで、『今回は順調』と言う人が多いのではないか、と思いました。何故なら『半年こなかったがこのところ来ているので順調です』などと言う方もいますので。
空欄の方も居ますが、『ここは書きたくない(知られるのが嫌)』という方は仕方が無いが、『書けない(私的に順調かどうか不明)(順調とは何か解らない)』方も居ます。この中には、仕事が忙しい場合』『責任の重い仕事を任された時』は生理が止まる、と言う方々です。

生理に関しては近視眼的な扱いをしているようです。半年とか1年とか、まして婦人体温計をつけているような人はほとんど居ません。
生理周期は一応28日が今でも基準だと思いますが、それで当てはめるとおそらく約8割が不順と言うことになります。
と言う訳で、記入方法に関しては今後の課題として取り組みたい、と思います。
RAKUにおける20代から40代女性の現状(H20年1~6月)
20代~40代 来院総数215名(20代・46名 30代・112名 40代・57名)出産経験の少ないのが特徴です。

データ図(省略) 20代

肩首82%、冷え66%、足腰52%、婦人科と頭の問題がそれぞれ43%です。

データ図(省略) 30代

肩首80%、冷え57%、足腰55%、頭46%、婦人科は26%です。

データ図(省略) 40代

肩首79%、冷え61%、足腰56%、頭54%、婦人科は37%です。出産経験者が30代の13%に対し28%なのは時代背景が影響しているのではないかと考えます。50代以上は出産経験者の割合が格段に高くなるのでは、と思います。

本論
見事に問題部位の上位の順番が同じです。肩首のコリや痛み、手先足先は勿論、腹部や体全体の冷えを訴える方も多い。さらに、腰痛や下肢のだるさや不調、頭痛や頭重に悩まされる姿が浮かび上がってきます。

婦人科の内容は、20代は生理不順が多く、40代は更年期症状や子宮筋腫などが問題になっています。30代は悪いなりにも安定している、と言うか『生理などにはかまってられない』状態と言うのが実情です。

さて、肩首の問題(凝りや痛みやシビレなど)、冷え、足腰(痛み、むくみ、シビレなど)頭の問題(頭痛、頭重、頭皮や髪の悩みなど)は世代を越えて問題となっています。
共通しているのは箱物(ビル)の中に居ること、PC作業を長時間していることです。

PCはあらゆる業務に浸透し、作業効率を上げると言う名目で仕事の中心に居座っています。実際、効率は上がり今まで複数の人間が行っていた仕事を一人でするようになっていることも当たり前になっています。当然一人当たりの仕事量と責任は増えています。
このことは長時間労働を生み出す温床になっています。つまり、長時間PCの前に繋がれている状態になります。
これは眼と脳と手先のみを使用する作業なので肩こりを、座り続けることは腰痛の原因となります。運動不足はあらゆる不調の原因になっています。消化器系の代謝は低下し、筋肉量の減少は冷えを生じ、緊張が続く神経疲労は微妙なホルモンのバランスを崩すようです。長時間の頭脳労働も冷えの原因です。血液の総量は一定ですが脳ばかりに集まることによって末端に行く血液量は減ることになるからです。使われない毛細血管の割合も増えることと思います。
第2の心臓である下半身の劣化は下半身のむくみだけではなく心肺機能の低下も生じさせることでしょう。

『PC作業に適応してゆく体の歪み』も問題です。同一距離を見続けるために顎は軽く前に出、キーボードの幅に合わせるために肩鎖関節が前にせり出す、これを支えるために頚椎と肩甲間部の筋肉と神経は持続した緊張を強いられ、主に胸椎の2から6番あたりが扁平になってきます。これを支えるために、主に胸椎の10から腰椎の3番あたりがC字に歪んできます。負担の重くなった腰椎と仙骨は後傾することによって圧迫から逃れようとします。さらなる安定を求めて仙腸関節も開きます。
ここまで来ればパソコンと一体化
した理想的な体形になります。特に女性は黄体ホルモンの関係で歪み易いのです。

こうして出来上がった*PC適応・理想の体形*のシルエットは『河童』です。使われないたわんだ腹部は『まさかの時の栄養源である脂肪を蓄える』のに最適です。

『河童化の弊害』はPCを離れて行動するすべての動作が苦痛になっていることです。
歩行、特に階段は辛いようです。腕をまっすぐ上にあげるなどはもってのほか、胸郭出口症候群寸前の肩鎖関節で悲鳴をあげることになります。胸郭も狭くなっているので呼吸も浅く、チョッとした運動でも息が上がって疲れてしまいます。

『河童化』すると『冷えた代謝の落ちた体』になります。河童化しては妊娠・出産は難しいのではないか、と考えます。RAKUではこのような歪みを『河童化現象』として説明しています。

一定温度が保たれている環境に居続けることは自律神経系に影響を与えるようです。異常気象の問題もあると思いますが、温度に適応出来ない不調、体温調節がうまくいかない不調を訴える人が増えています。主に睡眠障害や眩暈、浮遊感などでクリニックに通院しながらRAKUに来ています。

漢方では『血液は冷えを子宮に置いていく』と言って婦人科疾患の原因の第一である、としています。『冷えが瘀血の原因』と言うことです。

便利で効率的で沢山の余剰時間を産むはずのパソコン業務が諸悪の根源になっているのは考え物です。

脳ばかり使う作業は甘いものに手を出しがちになり、食生活の歪みや肥満傾向を促進します。脳が主にブドウ糖で生きているからです。
職場の引き出しにチョコレートや飴玉を忍ばせているのは疲れた脳を早く回復させよう、と思うからです。
ストレスは人間関係、職場の問題、将来への不安等様々ですが、女性は脳の構造が満腹中枢と快感中枢が隣接しているためにストレスフルになると過食傾向に陥ります。満腹中枢を刺激することにより快感中枢を連動させてストレスを解消しようと言うことです。そして体重増加を認識するとストレスフルなダイエットを試みたりするようになります。ストレスの悪しき循環です。

他力と自力(治療の目指すところ)

RAKUの施術は症状の改善を目的にしたシンプルなものです。他力は鍼灸手技療法、整体、アーユルヴェーダの施術、自力部門はYOGAです。これらを連動させて何とか症状の改善を計り、セルフコントロール出きる体を取り戻して頂こう、と言うものです。『四谷長島クリニック』『伴野クリニック』の協力も治療効果を高めています。

不妊治療に関するRAKUの方針はYOGAの出来る体に持ってゆく、と言うことです。結局、妊娠・出産は母体が行う作業です。健康な母体を作るには自力で畑を耕さなければ無ければならない、と言うことです。
他力部門では主訴の改善と心身の建て直しを目的に施術し、投薬や検査が必要な場合は行きつけの病院、それが無い場合はご協力を頂いている『伴野クリニック』や『四谷長島クリニック』を紹介しています。西洋医学との連携はとても効果的です。RAKUではこのことをインド+中国+西洋の3つのアーユルヴェーダの連携プレーと説明しています。

自力部門のYOGAでは骨盤内の血流を改善し生理を自然の状態に戻すこと、脳を開放し一旦ストレスを外すこと、自分の身体が気持ちよいことを味わうこと、この三点が女性性の回復と妊娠出産に繋がると考えています。

柳瀬YOGAの考え方と実際

妊娠できる体とはどういう状態の体でしょうか?

それは生理のリズムが正しく行なわれる体です。

生理というのは、生殖器(卵巣・黄体ホルモン・卵胞ホルモン)と 脳(下垂体・性腺刺激ホルモン)との間で行われる連携プレーによって行われます。
「河童化」に陥ってしまいますと、骨盤内が冷え、生殖器も冷えて機能が低下します。
加えてストレスにさらされた脳も疲弊して正しくホルモンを感受したり、分泌したり出来ない状況に陥るわけです。

ヨガというのは、あるポーズをキープしてほどく、ということで体のある部分に血液を送り込み温めることが出来ると同時に、キープするときに意識的に呼吸することと、体から湧き起る刺激を味わうことに集中しきることによって「脳」をニュートラル(ストレスから開放)することが出来ます。

骨盤内を温めるポーズを選択することによって、骨盤内と脳に同時に刺激を与え生理のメカニズムを整えることにつながります。
これを応用して私独自のエクササイズを考え出し、より効果を高めています。
具体的には、私自身の体感から「下肢内転筋群・骨盤底筋群・大腰筋・脊柱起立筋群」これらのコアマッスルを刺激して鍛えることが生殖器の血流をアップさせますので、それを中心にメニューを組んでいます。

★詳細は「モテYOGA練習帳」(小学館)参照

妊娠出産に至った症例紹介

RAKUに於ける一般的な妊娠出産SY 初診日2003年2月28日

症例4 Sさん この症例はRAKUにおける一般的な妊娠・出産の例です。YOGAを続けている内に、なんとなく妊娠して、自然に出産という流れです。

主訴は子宮内膜肥厚症(婦人科で診断)、冷え・肩こり・ストレスなどです。半年後には結婚式を控えていて、それまでに良い状態を作りたい、とのことでした。体質はKp(カファ・ピッタ)です。

初回はイライラや冷えなどの改善を目標にRAKUアーユルヴェーダ・コースです。歪みなどもありましたので整体も加えました。かなりスッキリした様子でした。
2ヵ月後、ストレスがかなり溜まったので来院、スッキリしたい、とのことでした。また、子宮内膜肥厚を何とかしたい、とのことでしたのでYOGAクラスに参加するように勧めました。『畑を耕そう』と言うことです。

自分のペースで月1~4回、結婚後もYOGAクラスに参加していました。生理の方も順調で、冷えはあまり気にならなくなっていたようです。そして、なんとなく『妊娠』、自然に出産でした。
症例3 不妊治療にRAKUを選択
アーユルヴェーダとYOGA三昧

Oさん 初診日2007年5月5日 33才→34才出産
来院から11ヶ月で出産。分娩台に乗って30分で出産。

身体の状態は頭重、首・肩・背部の凝り、胃痛、腹部の冷えと痛み、足腰の冷えとむくみ、
腰痛、便秘、眼の充血などです。生理の周期は22~25日で以前はもっと短周期。常にイライラして・・とのことでした。
22歳で結婚するも妊娠せず、医師の診断では「妊娠しにくい体」なので何らかの治療を、とすすめられる。不妊治療に対しては不安があり躊躇していた。知り合いにRAKUを勧められる。

治療目標は精神的ストレスの軽減、血流の改善、便秘の解消でした。アビヤンガ+シロダーラ+スウェダナ→整体+MT温灸療法が施術の流れで、これで対応しました。また、トリファラの錠剤もありましたのでお分けしました。
33才と若く体調も上向いたのでYOGAセラピーをプラスし相乗効果を狙いました。YOGAクラスにも参加し、アーユルヴェーダ療法とYOGA三昧の日々でした。仕事でのストレスや疲労も時にはありましたが何とか乗り切り、9月13日には妊娠確定(8週)しました。
その後は体調管理と筋力維持のためにYOGAクラスに参加。出産は軽く、30分で終了。胎盤は通常の1.5倍あったとのことです。

症例2 Yさん 初診日 2003年9月2日 38才→40才出産
35才・乳がん手術→ホルモン療法→自然妊娠・出産
来院から26ヶ月で出産

2000年に乳がん(右全摘出・一部リンパ切除)手術を受け、来院時にはホルモン療法は止めていました。
主訴は、首・肩・背部の凝り、頭痛、生理痛、腹部の冷えと痛み、下肢の冷えとむくみなどです。特にイライラと頭痛、生理痛はひどく、更年期様の症状です。生理周期は30日。身体の建て直しを目的に来院しました。妊娠に関しては諦めていました。体質はKpです。

1回目のYOGAセラピーで頭痛と生理が楽になり、数回続ける内には精神的にも安定しパニックに陥らなくなった。以後はYOGAクラスに参加し続ける。

凝りや冷えが改善され、精神的にも安定した時期を過ごしていたら妊娠が発覚、以後数ヶ月よい体調を維持するために引き続きYOGAクラスに参加。自力出産。

症例1 M さん  初診日 2005年5月27日 42才→出産44才
来院から出産まで16ヶ月

この症例は高齢出産です。主訴は腰痛・肩こり・下半身の冷え・イライラなどで不妊治療中でした。2004年7月には子宮内膜症の手術、来院までに9回の人工授精を試みていて、最後の人工授精にのぞむために来院しました。体質はPv(ピッタ・ヴァータ)です。施術は冷えと神経疲労を緩和する目的でアビヤンガ+シロダーラ+スェダナ(ac)
をしました。
5月29日に採卵したところ卵胞は空でした。ひどく落胆し、出産を諦めることを決心したようです。
「身体の建て直しを図りこれからの人生を楽しむように」、と提案しました。
提案を受け入れ、主にYOGA(週1回クラス)を中心に、オーバーワークした時にはアーユルヴェーダの施術と言う生活が始まり、それを楽しみ味わっていたようです。
身体の冷えや凝りも改善され、イライラも減って穏やかになっていました。そして来院から8ヶ月で妊娠確定。より良い妊娠の為にYOGAを継続、YOGAセラピーも受けています。
妊娠に伴う腰痛はマッサージと温灸療法(mt)で対応しました。出産は自力出産で4時間
でした。

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